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【繁多川】ボージガー

  • 文化・教育施設

王府の記録に残る「御穀ガー」

ボージガーは、那覇市繁多川2丁目にある湧泉です。首里城の南側に広がる繁多川の一帯では、水を通しやすい琉球石灰岩の層の下に、水を通しにくいクチャの層が重なっています。そのため、しみ込んだ雨水が地下でろ過され、崖の下などから湧き出しています。琉球王府が1713年(正徳3年)に編さんした地誌『琉球国由来記』には、この泉が「御穀ガー(オコクガー)」の名で記されています。現地の解説標識によれば、その名は「乳のような泉」「善い水」を意味します。泉は、王国時代に首里城と那覇港を結んだ街道「真珠道(まだまみち)」の沿道に位置しています。一方、「ボージガー(坊主川)」という通称は、近くにあった神応寺や識名宮の僧侶にちなむものと伝えられています。王府の記録に残る正式な名と、地域で呼び習わされてきた名の二つが、今日まで受け継がれています。


共同井戸として集落の暮らしを支えた水

繁多川には、ボージガーのほかにハンタガーやウフカーなどの湧水が点在し、住民の共同井戸として使われてきました。人々は泉で飲み水を汲み、洗濯をしました。子どもたちは水遊びをしながら、エビやカニを捕まえていました。豊富で良質な湧き水は、地域の産業も育てました。大豆を水に浸してすりつぶし、煮て固める島豆腐づくりには、多くの水が欠かせません。繁多川では湧き水を生かした豆腐づくりが盛んになり、周辺には120戸以上の豆腐店が立ち並んだとされます。ボージガーの水も、この豆腐づくりに用いられてきました。「繁多川豆腐」は地域の名物として知られるようになりました。


字指定文化財として守られる泉と豆腐づくりの継承

水道の普及などに伴い、湧泉で日々の水を汲む機会は減り、豆腐店の数も少なくなりました。こうしたなか、ボージガーは2008年(平成20年)3月31日、繁多川の字指定文化財に指定されました。泉の面積は166㎡、水深は37cmです。現地には繁多川自治会による解説標識が設けられ、泉の名の由来や豆腐づくりとの関わりが紹介されています。豆腐の伝統を次の世代へ伝える取り組みも続いています。地元の新聞社様は、2025年(令和7年)1月に開かれた催しを報じています。住民が石臼で在来の大豆「青ヒグ」をひき、昔ながらの豆腐の作り方を体験するものです。


泉とともに受け継がれる繁多川の記憶

ボージガーは、王府の記録に名を残す泉であり、住民の暮らしと豆腐づくりを支えてきた地域の水場でもあります。泉を文化財として守り、解説標識を整えてきた繁多川自治会と住民の方々がいます。石臼をひき、豆腐の味を伝え続ける人々もいます。こうした取り組みが、その歴史を今につないでいます。湧き水とともに育まれた繁多川の暮らしの記憶が、これからも地域の人々の手で次の世代へと受け継がれていくことが願われます。

                        (2026年10月執筆)

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