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羽村取水堰

  • 建物・施設

東京都羽村市に位置する羽村取水堰は、承応2年(1653)の玉川上水開削と共に築かれた、江戸・東京の繁栄を支える象徴的な土木遺産です。当時、江戸の飲料水不足を解消するため、玉川庄右衛門・清右衛門兄弟が幕府の命を受け、わずか8ヶ月という短期間で羽村から四谷大木戸までの水路を完成させました。建設資金が尽きた際には、兄弟が家屋敷を売って私財を投じたというエピソードはあまりに有名です。

本堰の最大の特徴は、増水時にあえて堰の木材を流すことで氾濫を防ぐ「投渡堰(なげわたしぜき)」という独特の柔構造にあります。この仕組みは『上水記』等の古文書にも記録され、享保6年(1721)には上流からの木材輸送のための「筏(いかだ)通し場」を巡る調整が行われるなど、物流拠点としての側面も持ち合わせていました。明治44年(1911)に固定堰部分がコンクリート化されましたが、投渡しの技術は日本で唯一現存する貴重なものです。

その歴史的価値から、平成26年(2014)には土木学会選奨土木遺産に認定されました。江戸時代の創意工夫を今に伝えつつ、現代の水道システムの一部として機能し続ける姿は、まさに生きた歴史教材と言えます。370年以上にわたり伝統技術を継承し、安全な水を送り続ける管理者の方々には、深く敬意が表されます。春の桜や秋の紅葉など四季折々の景観も美しく、「新東京百景」にも選ばれた歴史と技術の粋を感じに、ぜひ現地を訪れてみてください。

(2026年1月執筆)

PHOTO:写真AC

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