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洲埼灯台

  • 建物・施設

房総半島の南西端に立ち、東京湾の入口を見守る洲埼灯台。その歴史は、海の安全を願う人々の切実な思いから始まりました。かつて灯台東側の平砂浦海岸は「鬼が浦」とも呼ばれる航海の難所で、夜間や荒天時に房総半島最南端の野島埼灯台を目指す船が、この洲崎を誤認して座礁する事故が後を絶ちませんでした。この悲劇をなくすため、1919年に洲埼灯台は初めてその光を灯したのです。

設計は航路標識管理所の技手であった斎藤新治郎氏が手掛け、当時としては先進的であった鉄筋コンクリート造が採用されました。その強靭さは、わずか4年後の1923年に発生した関東大震災で証明されます。近隣のレンガ造であった野島埼灯台が倒壊するほどの激震の中、洲埼灯台は損傷を受けながらも倒壊を免れました。さらに1945年の太平洋戦争の空襲では、灯りの心臓部であるレンズが破壊されましたが、灯台本体は戦火に耐え抜き、戦後復旧して再び海を照らし始めました。

現在、洲埼灯台は対岸の三浦半島に立つ剱埼灯台と対をなし、両灯台を結ぶ線が東京湾と太平洋を分かつ法的な境界を示す、極めて重要な役割を担っています。その歴史的価値は2015年に国の登録有形文化財として公に認められました。

幾多の災害や戦禍を乗り越え、一世紀以上にわたり首都圏の海上交通の安全を支え続けるこの灯台と、それを維持管理する関係者の皆様には深く敬意が表されます。晴れた日には富士山や伊豆大島も望めるこの地を訪れ、歴史の重みと美しい景観に触れてみてはいかがでしょうか。

(2025年9月執筆)

PHOTO:写真AC

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