日本工業倶楽部会館
- 建物・施設
1917年に設立された日本工業倶楽部は、1920年、東京・丸の内にその活動拠点を構えました。横河民輔らが設計したこの建物は、当時希少であった本格的なセセッション様式を取り入れ、「雅にして堅」という理念を具現化したものです。屋上には当時の主要産業であった石炭と紡績を象徴する男女の像が据えられました。
1923年の関東大震災では被害を受けましたが、補強工事を経て、日本の産業発展を支える場として存続しました。戦後は主要な経済団体が事務局を置くなど、財界人にとって欠かせない交流の舞台としての地位を確立しました。
その歴史的・建築的価値は公的にも認められ、1999年には国の登録有形文化財となりました。しかし、老朽化と耐震不足への対策が急務となり、歴史的価値の維持と安全性の確保をいかに両立させるかが議論されました。専門家による検討の結果、2003年に建物の西側約3分の1を免震構造化して保存し、残りの部分を外観・内装ともに忠実に再現した上で高層ビルと一体化させるという手法で再生されました。大正期の名建築としての記憶を現代の都市景観に残すこの取り組みは、都市開発における歴史的建造物保存の重要な事例として高く評価されています。歴史的価値を次代へ継承するために尽力された運営に多大な敬意が表されます。
PHOTO:写真AC







