神戸北野物語館
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神戸北野物語館は、港町神戸の歴史を象徴する国の登録有形文化財です。
その歴史は1907年、アメリカ人M.J.シェー氏の邸宅として北野町1丁目に建設されたことに始まります。木造2階建ての下見板張りが美しいこの洋館は、その後、著名なドイツ人パン職人ハインリヒ・フロインドリーブ氏が所有者となりました。フロインドリーブ氏の生涯は、1977年に放送されたNHK連続テレビ小説『風見鶏』のモデルとなり、北野異人館街は一躍全国的な観光名所となりました。
しかし、1995年の阪神・淡路大震災で建物は全壊認定を受けるという悲劇に見舞われます。解体の危機に瀕しましたが、所有者から神戸市へ寄贈され、市が部材を丁寧に保管しました。そして2001年、その部材を最大限に活用し、北野坂に面する現在の地に移築・復元され、「北野物語館」として蘇りました。2009年からは「スターバックス コーヒー 神戸北野異人館店」として活用され、歴史と現代文化が融合する空間として親しまれています。
震災を乗り越え、市民と行政の尽力によって未来へ継承されたこの貴重な文化遺産は、今日も神戸の街の物語を静かに語り続けています。ぜひ一度、この歴史の息吹を感じる館を訪れ、特別な一杯と共にその物語に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
(2025年9月執筆)
PHOTO:写真AC