香東川橋梁
- 建物・施設
大正の息吹を伝える近代化産業遺産の威容
高松琴平電気鉄道琴平線が誇る香東川橋梁は、大正15年(1926)の琴平電鉄の開業に合わせて誕生しました。当時としては特徴的な構造を採用した「ポニートラス橋」であり、単なる川を渡るインフラとしての役割を超え、記念碑的な装飾美を纏っています。そこには、金刀比羅宮への参詣客を運ぶという大衆観光の夢と、鉄道建設に対する人々の強い誇りが刻まれていました。大正から昭和、平成、そして令和へと続く長い歳月の中で、多くの旅人の心を躍らせてきたその歴史的価値が認められ、平成21年(2009)には経済産業省の「近代化産業遺産」にも認定されています。かつての全盛期を彷彿とさせる優美な姿は、今なお香東川の象徴として輝いています。
世代を超えて親しまれる「コウトウ」の情景
地元住民や鉄道ファンから「コウトウ」の愛称で親しまれるこの鉄橋は、周囲に遮るものがない広大な青空を背景に、美しい列車の姿を捉えられる屈指の撮影スポットです。特に大正15年(1926)製のレトロ電車が渡る瞬間は、独特の吊り掛けモーター音と重厚なジョイント音が川辺に響き渡り、周囲を一瞬で古き良き時代へと引き戻します。一宮駅や円座駅からののどかな道のりも、訪れる人々の心を穏やかに和ませる大切なエピソードとなっています。
時代の要請に応える新橋計画と地域交通の変遷
時代の変化とともに、鉄道橋の傍らでは新たな生活の基幹となる道路橋の整備が進められました。平成23年(2011)には慢性的な渋滞解消を目的とした延長470メートルの市道下川原北線の整備の一環として、新しい香東川橋梁が架けられることとなりました。この新橋は、高松空港や新高松市民病院(仮称)といった重要拠点へのアクセス向上を目指す「県道三木綾川線バイパスルート(仮称)」を補完する生活基幹道路として、平成23年(2011)11月の地域審議会でも早期着工が熱烈に望まれた、地域の悲願ともいえるプロジェクトです。
悠久の流れに新旧の絆を架けて
大正の残り香を運ぶ古い鉄橋と、現代の暮らしを支える真新しい道路橋。香東川に架かる新旧のコントラストは、この地を愛する人々の営みを象徴する独特の情景を創り出しています。歴史を紡いできた先人たちの情熱と、未来の利便性を追求する関係者の方々に深い敬意を表します。この地を流れる穏やかな川面とともに、二つの橋が末永く地域の安全と繁栄を支え、次世代へとその記憶が受け継がれていくことが心より願われます。
(2023年5月執筆)
PHOTO:PIXTA







