【室蘭本線】栗丘駅 廃駅か
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人夫の熱気と住民の手が拓いた「栗丘駅」の原点
北海道岩見沢市栗沢町に位置する室蘭本線の栗丘駅は、過酷な開拓史と地域住民の熱意によって産声を上げた歴史を有しています。この地域の歩みは、1889年(明治22年)4月に柴田與次右衛門氏が柴田農場を開設し、アイヌ語で「イタドリの群生する所」を意味する「クッ・タル・シ」に由来する久樽地区の開拓に着手したことに端を発します。翌1890年(明治23年)に空知集治監の囚人による夕張道路の開削が進められた後、1891年(明治24年)には難所であった栗山トンネルの工事が本格化しました。伝承や当時の記録によれば、工事現場周辺には労働者のための飯場や資材置場が林立し、商人らも集まって約30軒規模の市街地が形成されたと伝えられています。1892年(明治25年)8月1日に北海道炭礦鉄道の手により開通を迎えた後、太平洋戦争末期の1943年(昭和18年)9月25日には戦時輸送力増強を目的として栗丘信号場が開設されました。戦後に信号場廃止の方針が示された際には、多くの地元住民が立ち上がり、用地の寄附や住民総出の手押しによるホーム造成作業を完遂させました。住民たちの熱意が実を結び、1946年(昭和21年)4月1日に一般駅としての栗丘駅が正式に開業を迎えたのです。
石炭輸送の黄金期と煤煙が染めた栗山峠の記憶
旅客駅となった栗丘駅は、1947年(昭和22年)12月1日に車扱貨物の取扱いを開始し、翌1948年(昭和23年)11月には信号場時代の建物を増築して待合室や物置を新設するなど、地域の拠点として急速に整備が進められました。折しも北海道の産業を支える夕張や石狩炭田からの石炭輸送が最盛期を迎える中、室蘭本線の輸送動脈としての重要性は急速に高まりました。そして1969年(昭和44年)9月22日、難所であった栗山〜栗丘間の輸送力増強を図るため新栗山トンネルが開通し、待望の複線化が達成されました。従来の旧トンネルを下り線、新トンネルを上り線とする体制が確立され、相対式ホーム2面2線と安全側線、跨線橋を備えた近代的な交換駅へと発展を遂げました。当時の鉄道愛好家らの回想によると、栗丘周辺の丘陵地やトンネル坑口付近は、重量級の石炭列車を牽引するD51形蒸気機関車などが挑む峠越えの力走を捉える屈指の撮影地として全国から多くの人々を集めたと伝えられています。残された記録からは、吐き出される黒煙と地響きが交錯した往時の圧倒的な活気が克明に窺えます。
1990年の豪雨災害とトンネル崩壊が刻んだ単線化の痕跡
産業構造の転換に伴い、栗丘駅は1972年(昭和47年)3月15日に貨物取扱いを終え、1980年(昭和55年)5月15日には荷物取扱い廃止とともに無人駅となりました。その後、1982年(昭和57年)にコンパクトな駅舎への改築を経て、1987年(昭和62年)4月1日の国鉄分割民営化によりJR北海道へと承継されました。転機が訪れたのは1990年(平成2年)4月23日午前のことです。集中豪雨に見舞われた下り線の旧栗山トンネルにおいて、明かり取り覆道構造部が土砂崩壊により大規模に破損する事故が発生しました。当日のうちに上り線の新栗山トンネルを上下共用として運行を再開させたものの、すでに石炭輸送の衰退で運行本数が大幅に減少していたことから、巨額の復旧費用を要する旧下り線の再建は見送られ、恒久的な単線運転への移行が下されました。現地を訪れた愛好家らの観察記録によれば、放棄された旧トンネルの天井には今なお蒸気機関車の煤煙痕が生々しく残り、明かり取りから光が差し込む特異な廃線景観が静かに時の経過を伝えているとされています。
時代の奔流を見届けた停留場の黄昏と受け継がれる遺構
恒久的な単線化への移行に伴い、栗丘駅構内の交換設備や安全側線は撤去され、東側の旧1番線ホームのみを使用する1面1線の停留場へと縮小されました。現地観察の記録によると、駅構内には板で閉鎖された跨線橋や草木に埋もれた旧2番線の石垣、さらには付近の踏切に残る線路の埋め戻し跡など、かつての複線時代の威容が随所に色濃く刻まれていると報告されています。無人化後の1982年(昭和57年)に建て替えられたコンパクトな待合室には、地元住民による掲示物などが手入れされ、日々の静かな生活を支える温もりが保たれてきました。しかし、過疎化とモータリゼーションの進展に伴い利用者は漸減し、2026年(令和8年)7月、運営元様が2026年度(令和8年度)中に栗丘駅を廃止する方針を固めた旨が大手の新聞社から報じられました。かつて開拓期の飯場から始まり、住民の結束によって駅へと昇格し、近代産業の動脈として黒煙を浴び続けたこの地は、北海道の近現代史を物語るかけがえのない産業遺構として今もその記憶を留めています。
(2026年11月執筆)

昔の跨線橋と列車が歴史を伝えます。

小さな駅舎が静かに佇みます。
PHOTO:写真AC







